大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(ネ)1816号・昭55年(ネ)797号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

五相続回復請求権の時効消滅の主張について

控訴人らは被控訴人らの本訴請求はその性質上相続回復請求権の行使にほかならないところ、右請求権は昭和三三年八月五日の経過により民法八八四条所定の五年の短期消滅時効が完成し、もつて消滅したと主張する。

そこで判断するに、一般に、共同相続人のうちの一人が相続財産のうち自己の本来の相続持分をこえる部分について他の共同相続人の相続権を否定し、その部分もまた自己の相続持分であると称してこれを占有管理し、他の共同相続人の相続権を侵害している場合については、相続回復請求権の規定の適用を特に否定すべき理由はないが、右共同相続人の一人において、自己の本来の持分をこえる部分が他の共同相続人の持分に属することを知りながら、又はその部分についてもその者に相続による持分があると信ぜられるべき合理的事由があるわけではないにもかかわらず、その部分もまた自己の持分に属するものであると称してこれを占有管理している場合には、右規定の適用がなく、侵害者たる共同相続人は同規定による時効を援用して自己に対する右侵害の排除の請求を拒むことができないものと解すべきである(最高裁昭和五三年一二月二〇日大法廷判決・民集三二巻九号一六七四ページ参照)。

そして、さきに認定したところによれば、控訴人庫太郎は本件共同相続人らが本件不動産について相続持分を有することを知りながら、たとえ本件不動産を控訴人庫太郎が単独相続することについてその余の本件共同相続人らにおいて異議を述べないと考えていたものとしても、前記のとおりその余の本件共同相続人らの承諾を得ることなく同人らには無断で遺産分割協議書を作成して本件不動産の所有名義を控訴人庫太郎名義にしたというのであるから、かかる事情のもとにおいては、控訴人庫太郎が単独相続したと信ずるにつき少くとも合理的事由がある場合に当らないことは明らかであるから、控訴人らによる相続権侵害の排除を求める被控訴人らの本訴請求については、相続回復請求権に関する規定である民法八八四条の規定の適用はない。

よつて、右規定の適用を前提とする控訴人らの主張は、その前提において既に失当というほかはない。

(渡辺忠之 鈴木重信 渡辺剛男)

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